”To know that we know what we know, and to know that we do not know what we do not know, that is true knowledge.”
Nicolaus Copernicus
Albert Einstein
About
青白い骸骨星座のよあけがた
凍えた泥の乱反射をわたり
店先に一つ置かれた
提婆のかめをぬすんだもの
俄にもその長く黒い脚をやめ
二つの耳に手をあて
電線のオルゴールを聴く
―――『春と修羅 ぬすびと』 宮沢賢治
国学院大学所属の天文同好会(サークル)。天体観測・プラネタリウム鑑賞・合宿などの活動を通じて星を観て、識り、そして親しみます。
カノープス(Canopus)はシリウスに次ぐ2番目に明るいりゅうこつ座の星でありながら南寄りの低空に位置する為に、北半球の多くの地域では観測は容易ではありません。(おおいぬ座の前後の足先を使う方法や、後ろ足付近の三角形がなどがめぐるめあてになります。)
それゆえに、古代中国では南の空すれすれを輝き抜けるこの赤い星を「南極老人星」や「寿星」と呼び、ひと目観れば寿命を1年延びる縁起物として親しみました。
一方日本では、カノープスを「布良星」と呼んでいました。「布良」とは千葉県房総半島の南端、館山あたりにある漁村で、この星は嵐で命を落とした漁師の魂と結び付けられ、「布良星が見えたら海が荒れる」と信じられていました。
カノープスが含まれるりゅうこつ座はかつての巨大星座「アルゴ座」の一部でした。アルゴ座はギリシア神話に登場するアルゴー船を象ったもので、イアソンに率いられヘラクレスを含む様々な英雄たち(アルゴナウタイ)が数多の航海をした船です。そしてこのりゅうこつ座はアルゴ座の「竜骨」、つまり船の底の中心線にあり、船首と船尾をつなぐ重要な構造材部分に相当していました。現在はアルゴ座が大きすぎるとして「りゅうこつ座」(竜骨)、「ほ座」(帆)、「とも座」(艫)の3つに分けられています。
このように星ひとつひとつにそれぞれの物語があり、夜空がまるで黒塗りの図書館のように見えてきます。書籍「カノープス」を開けば、「布良星」「りゅうこつ座」などの目次があり、しかしそれだけではなく、初めてカノープスを観た時のこと、カノープスと名前が付けられた他の物事なども書き記されているはずです。
わたしたち「カノープス」と共に星めぐりをしながら書き綴りませんか?